Workplace
Nov. 13, 2017
3つのCの実現を目指す
ダウンタウン再生プロジェクト
[Downtown Project]Las Vegas, USA
ダウンタウン地区はラスベガス発祥の地。現在の中心地「ストリップ」に人気を奪われ、よく言えば「古き良き街並み」が残るが、旧繁華街は治安が良いとは言えず、この数十年間はわずかな観光客を惹きつけるのみとなっている。
「ダウンタウンプロジェクト」はこの状況を改善すべく、地域再生の試みとして始まった事業だ。その額3億5000万ドル。これを不動産開発、スモールビジネスへの投資、テック企業への投資、教育への投資に配分している。コンセプトは3つのC。すなわちCollision(出会い)、Co-learning(学びあい)、Connectedness(結びつき)である。3Cを色濃く持つ施設を巡ってみよう。
2013年にオープンしたナインスブリッジスクールでは、乳児から小学校低学年までを対象としたアントレプレナー教育が行われている。創業者のコニー・イップ氏はNYの金融業界からこのプロジェクトを機に教育事業に飛び込んだ。
9th Bridge Schoolの外観。1階は幼児教育、2階は小学校。
http://9thbridgeschool.org
子供が自ら学びを計画、実行、
再考する教育モデル
幼児教育では子供自らが計画、実行、再考する教育モデル「ハイスコープ」を採用、子供たちは興味の赴くままに学ぶことができる。小学校は多角的な思考を養うプロジェクトベースのSTEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, Math)教育が売りの1つ。
例えば各自で探索したテーマの中に、物の上げ下ろしの方法について考えた生徒がいた。子供自らでリサーチをし、ダンボールやロープを使ってプロトタイプを製作した。エンジニアリング、数学、アート、コラボレーション、デザインシンキングなどの要素が盛り込まれた学習である。
親の関わりや、コミュニティとのパートナーシップも同校の特色だ。毎朝、子供と両親、学校スタッフが集まる会合を開き、つながり感を醸成。校舎を飛び出して街のなかで学ぶ生徒は、同校においてはよくある風景だ。
「先日はみんなで書店を訪れました。ダウンタウンには学ぶ機会がたくさんあります。その中で自分の情熱を見つけてほしい」(イップ氏)
ナインスブリッジスクール
ファウンダー
コニー・イップ
ダウンタウン地区の再生に
寄与する商業施設群
ダウンタウン・コンテナパークは、38のお店やレストランが入居するショッピングモールだ。「大人の街」ラスベガスに家族連れやカップルたちを呼び込む。出店しているのは大手チェーンではなくスモールビジネスが中心、それもほとんどが1号店である。コンテナパークはダウンタウン地区におけるインキュベーター的な役割も果たしているのだ。
「人が出会い、学び合い、つながるというダウンタウンプロジェクトを、まさに体現した場所だと思います」と語るのは、ダウンタウンプロジェクトの広報担当マリア・フェラン氏だ。さらにジェネラルマネジャー、キャロライン・モリアーティ氏は続ける。
「テナント同士で助け合うことができるよう努力しています。クラフト作りやコンサート、映画鑑賞会と、家族向けのイベントが多々ありますし、誰が隣に座るかわかりません。私自身、ここで働いていると知らなかった多くの友人に出会うのです」
ダウンタウンプロジェクトは現在4年目。このビジネスを持続可能なものにするべく収益化に注力しているところだ。この後も大きなプロジェクトが続くが、なかでもアパートの建設は意義深い。231の部屋を有し、それぞれ1〜3ベッドルームになる予定。
「ダウンタウンは住宅事情が悪く、高級すぎる物件か低所得者向けかのどちらかで、その中間にあたる物件がありません。アパートが完成し、住民が増えれば、私たちのビジネスを活性化することにもつながります。この街に住宅を供給できることを、嬉しく思います」(フェラン氏)
text: Yusuke Higashi
photo: Hirotaka Hashimoto
WORKSIGHT 10(2016.10)より
コンテナパーク
ジェネラルマネジャー
キャロライン・モリアーティ
ダウンタウンプロジェクト
広報担当
マリア・フェラン