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自社サービスのブランドを体現した
シンプルかつ洗練されたオフィス

[Squarespace]New York, USA

シンプルかつデザイン性の高いホームページが作れることで高い評判を得ているホームページ作成サービス、Squarespace。運営するスクエアスペースが2004年にニューヨークでリリースしたのが始まりだ。以来、全世界で200万人以上の有料会員を集める一大サービスに成長した。従来は点在する4つのオフィスを有していたが、2016年3月、それらのオフィスを統合する形で、現在のマンハッタンのオフィスに入居した。

「この建物は1920年代に建てられ、出版、印刷の企業に使われていたものです。業界の次世代的存在である私たちスクエアスペースがここに入れたことに、不思議な縁を感じました」。ヴァイス・プレジデントのクリス・パシェット氏は言う。「デザインはミニマルかつ流動的で、ブランドの特性を反映しています。テック企業がよく採用する、いわゆる『オープン・フロア・プラン』を選び、スタッフが背を向け合うようなことのない、通路が流動的に流れるオープンなデザインにしました。スタッフ同士のコラボレーションを促進する、クリエイティブな環境作りを目的にしています」

目指すのは「大人のためのコラボレーション・スペース」

オフィスのデザインは外部の建築事務所が担当したのだが、使用する木材やパネル、塗料に至るまで、ファウンダーでCEOのアンソニー・カサリーナ氏が細かく指示したそうだ。「デザイン志向の会社ですからね。彼にとっては楽しい作業であった一方、大変な労働になったのではないかと思います」。ただもちろん、創業者の独断で決めたわけではない。オフィスで働く400人以上の社員から新オフィスに求める環境についてフィードバックを受け、それを踏まえた上でトップであるカサリーナ氏が最終決定を行ったということ。オフィス移転に関する、トップの強い意志が感じられる。

そうして作られた新オフィスは、洗練された、エレガントで無駄のないデザイン。クリーンで正確で、配慮が行き届いている。「大人のためのコラボレーション・スペース」を目指しているとあって、テック企業にありがちな、例えばピンボール・ゲームのようなものは見えるところには置かない。「職場は商品を反映するものです。最小限のものしか置かないことが重要なんです」(パシェット氏)

これもすべて、彼女曰く「ここで過ごす時間は、家で家族と過ごす時間よりもずっと長い」からだ。転職の多いテック業界では、一人の人間が一つの会社で過ごす期間は他の業界に比べて短い。その間の体験を最善化し、求められる人材がここで仕事をすることを楽しんでもらえる環境を作ることが、企業にとって重要なことだとスクエアスペースは認識している。

スクエアスペース、ニューヨーク・オフィスの外観。
https://www.squarespace.com

ヴァイス・プレジデントを務めるクリス・パシェット氏。

  • 階段の周辺にはコミュニケーション・エリアが。また吹き抜け構造により、オフィス内に視覚的なつながりを作る工夫もされている。

  • 至るところに植物が配された、健康に気を配ったオフィス。

  • 各階をつなぐ階段が社員間のコミュニケーション促進に一役買っている。

  • カフェテリア。段差を活用することにより、オープンなフロアにカジュアルなエリアとプライベートなエリアを分けている。

  • 執務スペース。デスクは角度をずらして、スペースに余裕をもって連結されているため、自然と話しかけやすいスペースが生まれている。

  • ミーティング・ルームは全てガラス張り。透明性を重視した企業カルチャーを反映している。

  • デスク周辺にはオープンなミーティング・スペースも。

  • マンハッタンを一望できるルーフトップ・エリア。ここもコミュニケーションを生むスペースだ。

  • レセプション。ゆったりとしたラウンジにはさまざまなアート・ブックが置かれており、来訪者に自社のブランド・イメージを訴求する。

  • ワーカーはペット同伴での出勤も可能。

社員からのフィードバックを反映し
柔軟に変革を続ける

パシェット氏率いるファシリティ・チームは、常に社内を回って社員とコンタクトを取り、集めたフィードバックをカサリーナ氏に伝えている。オフィスにどんな不満があるのか、何が必要なのか……。「社員にはここで働くことをエンジョイし、誇りに思ってほしいんです」とパシェット氏は言う。

入居から約2年が経つが、予想以上に社員数が増えてきており、さっそくフロアの増築に取りかかっているそうだ。スクエアスペースは社内文化的にミーティングの数が多く、ダブリンやポートランドにもオフィスがあるため、すべての部屋でカンファレンス・コールができるようにしたいという。また、人員が大幅に増えた部署のため、50人規模の会議室も作る。社員のフィードバックを受け、柔軟に改善していく土壌がスクエアスペースにはあるのだ。

同様のケースは、ほかにもある。「月曜日から金曜日までランチをケータリングするのがスタッフから好評なのですが、一度に人が集まってしまうため、サーブの時間を延ばしました。また、カスタマー・サービス部門の社員が列に並ぶと席を離れる時間が長くなってしまうため、カフェテリア以外の場所に食べ物を置くなどの工夫をしているんです」(パシェット氏)

スクエアスペースの変革はテクノロジーの進化とともに

会社として社員同士のコラボレーションを促進するイベントも定期的に開催しているようだ。「例えば1カ月に1回、持ち回りで各部署がパーティのホストを務める飲み物をサーブするイベントがあります。チームによっては会場のデコレーションを工夫したり、その日のテーマを設けたり。他部署の社員を招いてコネクトする機会にするのです」(パシェット氏)。また、自らの部署で進めているプロジェクトなどを他部署に向けて説明する「セッション」というイベントも行われているようだ。

これからのスクエアスペースは、どのように変わっていくのだろうか。パシェット氏は今後について、「テクノロジーの進化によって職場がどのようにして改善されるのかは、エキサイティングです」と言う。例えば彼女がMITメディアラボで見たという、センサー付きのカンファレンス・ルーム。話し手の周りにライトが点灯するようになっており、口数の少ない社員に発言する機会を提供するような使い方が想定できると言う。

社員の声に耳を傾け、深くケアしようと心掛けるトップが率いるスクエアスペース。自社サービスのブランド価値向上にもつながるオフィス改革は、「エキサイティングな未来」へ向かって日々着実に進められている。

text: Yuki Miyamoto
photo: Ryo Suzuki

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