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オープンガバメントを推進し
当事者たる若者に未来を託す

[PDIS]Taipei, Taiwan

PDIS(Public Digital Innovation Space)は政府が狙う、市民と政府との間に信頼関係が構築された社会を推進する組織、いわゆるポリシーラボだ。軸となるのは、オープンガバメント、社会起業家育成、また「青年の興味関心を知る」ための青年コンサルティングの3つである。

もとより台湾は、政府のオープンデータの指標「グローバルオープンデータインデックス」で2016年、2017年と世界1位を獲得するほど、情報の透明性が高い。

「オープンガバメントという流れの中で公務員の文化を変えたいのです。私たちは、公務員の自発的な行動を促すことが役目です。『雨だれ石を穿つ』のように、長い時間をかけることになると思いますが、きっと実現できるはず」(プロジェクト・コンサルタントの張芳睿[チャン・ファンジュイ]氏)

PDISのメンバーは財政部や内政部など32の部署から1人ずつピックアップされる。彼らはPO(Participation Officer)という職務につき、政府がうまく対応していない点を発見、社会起業家に力を貸す。具体的な問題解決にはシビックテックの民間団体g0v(ガブゼロ)も関与する。

「市民がアイデアを書き込めるサイトもあります。賛同者が5000人を超えたら、政府は正式に対応しなければなりません。例えば動物を守るための組織を設立する提案があれば、POは政府と民間の架け橋となり、コミュニケーションを進めます」(アドバイザーの賴致翔氏[ライ・チーシャン]氏)


インタビューに答えてくれた張芳睿氏、賴致翔氏、戴君翰氏。留学中のインターン、政府役人、テックカンパニー出身者と経歴もさまざまなメンバーが業務にあたる。

  • 空軍基地の払い下げ地にできた拠点「Social Innovation Lab」にスペースを持つが、ここは社会起業家の志望者などと会って話す場所。メンバーは普段はSandstormで情報共有しながら散り散りに活動する。

  • 起業家向けシェアオフィスのその一角をPDISが使用。デザイン図書などを中心にセレクトした図書館になっている。

  • 2018年7月、PDISはニューヨークで2日間にわたるワークショップを行った。テーマは「vTaiwan」と「PO Network」。写真奥はPDISをプレゼンテーションする唐氏。

  • 会議室。定期的に唐氏が訪れ、市民と会談する。オープンガバメントの一環として、すべてのやり取りは一字一句ネットに公開される。

「徹底的な透明性」を政府に求めた
伝説的なハッカーが大臣に

組織の発足は、台湾の伝説的なハッカー、唐鳳(オードリー・タン)氏がデジタル担当大臣として登用されたことに端を発する。

彼女は小学校を卒業すると独学でプログラミングを身につけ、その後g0vやひまわり学生運動で活躍、政府に対して「徹底的な透明性」を求めてきた人物だ。

元空軍基地であるこの場所を唐氏は毎週訪れる。ここだけではない。「台湾の行政機関はほとんど北部に集中していますが、中部、南部、東部にも社会起業家になろうとする者たちがいます。唐さんは2週ごとに東西南北を回り、会談しているのです」(ITエンジニアの戴君翰[ダイ・ジュンハン]氏)。社会起業家を目指す訪問者と会談し、その模様を一字一句残らずネットに掲示する。これもまた「雨だれ石を穿つ」の精神である。

コンサルティング(ワークスタイル):N/A
インテリア設計:Jason Lee (Boson Design)
建築設計:Jason Lee (Boson Design)

text: Yusuke Higashi
photo: Kazuhiro Shiraishi

WORKSIGHT 14(2019.1)より

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