Workplace
May. 13, 2019
海外で活躍できるスタートアップを
独自のプログラムで育成
[Taiwan Startup Stadium]Taipei, Taiwan
2014年から国家発展委員会がスタートアップ支援プログラムを進めている台湾だが、台湾スタートアップ・スタジアムは最たる成功例の1つだ。狙いは台湾のスタートアップをグローバル化すること。海外のアクセラレーターやグーグルなどのテックカンパニーと台湾企業をつなげる活動に取り組む。他の政府系プロジェクトとの違いは「政府系プロジェクトに見えない」ブランディング。カジュアルなロゴデザインに猫のキャラクターと、スタートアップ・コミュニティが親近感を持てる佇まいだ。
プログラムの例を挙げよう。アクセラレーター・ブートキャンプは、アメリカ、アジアのアクセラレーターを台湾のスタートアップとつなげる試み。10社のスタートアップのうち7つがアクセラレーターの支援を受けることが決まった。「彼らはサービスや製品は悪くないのですが、自分のストーリーを語ることができません」と運営にあたるゼネラル・マネージャーのホリー・ハリントン氏は語る。
「例えば台湾のスタートアップは失敗経験を隠しがち。でもアクセラレーターは失敗を共有したいし、失敗からより多くのことを学んでいるかを重視しています。またアクセラレーターは学歴を気にせず人間性を見ています。チームメンバーの関係はいいかどうか、コミュニケーションがうまくできているかどうかなどです」
外観。SYNTREND 三創生活園區はホンハイ系列の施設で、ITガジェットのみを取り扱う個性的なモール。そのワンフロアに入居している。
1年という時間をかけて
スタートアップとの関係を築く
スターティングラインナップというメンバーシップ制度も始めた。これは1年間という長いスパンで関係性を維持するためのプログラム。現在は130近いスタートアップが参加している。4カ月ごとに投資家やアクセラレーターにスタートアップの情報を提供することで投資家とスタートアップを繋げる。毎月1度は「CEO DAY」。スタートアップのCEOが知るべきことについての講座を開いている。例えば「スタッフを雇用するまたは解雇する際にどうすればいいのか」「会社が大きくなる時に社風を維持する方法」などだ。なお全てのプログラムは英語のみで行われる。
2017年12月の時点で、メンバーシップに参加しているのは125のスタートアップ。そのうち80%以上をソフトウェア系が占め、ハードウェア系は20%以下だ。また60%のチームはメンバー全員が台湾人で、教育も台湾で受けている。2016年2月から2017年12月までの間に2%がアクセラレーターからの支援をゲットしたが、全体の9%は既に失敗しているという。
「最も大きな失敗原因は、資金面ではなくチーム内にあります。ファウンダーが彼らの方向性に賛同してくれない、持っているスキルが適切ではない、チーム全員がエンジニアでビジネスがわかる人がいないためにチームは強くならない、などです」
台湾スタートアップ・スタジアムが入居するのはSYNTREND 三創生活園區のワンフロア。スタートアップ育成を担う三創の一部門「Star Rocket」からスペースを借りた。三創は自身の社風が保守的であることを自覚し、スタートアップとのコラボを模索しているのだという。台湾スタートアップ・スタジアムのメンバーであれば外のカフェで注文する際にディスカウントを受けられる。毎週月曜の朝には「Type-A Breakfast」というイベントも。これは「8時間かかる仕事を2時間で集中して終わらせてしまおう」というコンセプト。このために三創はビルのセキュリティシステムを調整し、朝早くから集まれるよう協力した。
他国とのコラボも模索しているという彼らは日本のスタートアップとも交流を始めている。「日本は台湾よりも国内マーケットが広いぶん、国内マーケットにフォーカスしがち。台湾のスタートアップから、多様性とグローバルな視点を学んでもらえると思います」
Taiwan Startup Stadium
総経理(2018年10月に退任)
ホリー・ハリントン
コンサルティング(ワークスタイル):N/A
インテリア設計:N/A
建築設計:N/A
text: Yusuke Higashi
photo: Kazuhiro Shiraishi
WORKSIGHT 14(2019.1)より