Workplace
Nov. 25, 2019
「未来」を生み出し続ける
スタートアップ・スタジオ
[Giant Pixel]San Francisco, USA
ジャイアント・ピクセルは「スタートアップ・スタジオ」の代表的な存在として知られている。スタートアップ・スタジオとは、一定規模の会社が母体となり、新規事業として次々とスタートアップを生み出す注目される組織形態。さながらスタートアップの「保育器」だ。長年にわたり、スマートフォンのアプリや各種プロダクトなど、さまざまなスタートアップのアイデアをテストし、見込みがあれば賭けに出た。
現在、代表のアラン・ブレイバーマン氏が注力しているのは「Textline」という会社。カスタマー・センター用のテキスト・メッセージ・サービスとして立ち上がり、やがてジャイアント・ピクセルから独立した。現在のオフィスには、それらジャイアント・ピクセル発のスタートアップと、場所をシェアするのみの小さなスタートアップが混在している。
ブレイバーマン氏はこれまで、テック系企業の従業員、共同経営者、あるいは投資家としてシリコンバレーで20年もの間、仕事をしてきた。だがその間、自身のオフィスに満足したことはなかったという。たいていの会社は予算がなく、オフィスが十分にデザインされていなかったのだ。デザインよりもエンジニアリングが大事、まだそのように考えられていた時代のことだ。
だがブレイバーマン氏は、iPhoneで世界を変えてみせたアップルを引き合いに出しながら、デザインこそが重要だと強調する。
「もし成功する会社をつくるなら、そして自分のチームにデザインは重要だというメッセージを送りたいなら、自身のチーム用であろうとビジター向けだろうと、ビジネスパートナーまたは投資家のためであろうと、それをみんなに伝えるようなスペースを持つべきです」
建物外観。元は印刷工場だったが、ジャイアント・ピクセルが入居する前は空っぽの状態で、老朽化が激しかった。
老朽化した元印刷工場のビルに
感じられた未来
彼は長い間、インスピレーションを受けられるようなオフィス空間を持つことを夢見ていた。その夢を叶えるきっかけは、ジャイアント・ピクセルを立ち上げて間もない頃、偶然発見した元印刷工場のビルだった。
そのビルはそもそも、オフィス用の物件を探していた友人が業者に紹介されたもの。友人が「ここはダメだ」と言うほど老朽化していた。だが、その場に同席していたブレイバーマン氏の印象は違った。空っぽのスペースにこそ、未来を感じたのだ。「彼(友人)はクレイジーだ、このビルにはたくさんの可能性があるのに、と思いました」。そして前職時代に縁があったO+Aに声をかけたのだった。「O+Aは私たちにディスカッションをリードさせてくれました。私たちは途方もないリクエストをして、彼らはそれをどう組み込むか、方法を考えてくれました」
完成したオフィスには、ブレイバーマン氏の美学が大いに反映された。例えば、それとわからない形で使用されている、映画『スターウォーズ』からのモチーフ。O+Aが手がけたほかのオフィスを見て「私たちも似たようなものが欲しい」と伝えたという「カバーナ」。
「スペースをふんだんに使った場所があります。たくさんのものを詰め込むこともできるけれど、白い空間をゆったりと使って、意図的にものを並べることもできます。何が適切な表現かはわかりませんが、このスペースにはデザイン的な感性が存在しています。このスペースを見た人が、ここにあるものが機能的に並べられているのを見て、デザイン的感性をわかってくれるといいですね」(ブレイバーマン氏)
text: Yusuke Higashi
photo: Satoshi Minakawa
WORKSIGHT SPECIAL EDITION【Studio O+A】(2019.7)より
ジャイアント・ピクセル
パートナー
アラン・ブレイバーマン