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トレンドの変化を見極め
クリエイティブに対応する場

[Microsoft]Redmond, USA

ここは米ワシントン州シアトル近郊、レドモンドにあるマイクロソフト本社。その内部にあるエグゼクティブ・ブリーフィング・センターは、各社の重役を招き、数日間にわたりマイクロソフトのソリューションを学んでもらう場。いわば巨大なショールームである。アントン・アンドリューズ氏が統括するエンビジョニング・センターも、その一角にある。役割は3〜5年の未来に向けた変化をリサーチから見極めることだ。

「そのためには、マイクロソフト社の外に出て、世界中の人にインタビューをします。軍人や建築家、心理学者、組織のエキスパートやジャズ・ミュージシャンなど、多種多様な職業の人に話を聞きます。ミーティングをここの会議室で開くこともあります」(アンドリューズ氏)

その結果を持ち帰り、エンジニアのチームと社のプレジデントに報告し、ビジョンを統合。それをもとにプロトタイプを作り、展示を行う。

展示スペースは大きく3つに分かれている。未来の「ワーキング・エリア」「アウトドア・エリア」「カフェ・エリア」である。O+Aは、このうちワーキング・エリアを任された。なぜO+Aに白羽の矢が立ったのか。ここで試行されているのはソフトウェアを扱う以上のこと。ソフトウェアとハードウェア、そしてカルチャーが関わる領域。O+Aはそれを熟知していたのである。


マイクロソフト
マイクロソフト・エンビジョニング・センター
ディレクター
アントン・アンドリューズ

  • スタンディングのミーティングスペース。議論の盛り上がりに合わせて照明の色が変化する。AIなどのソフトウェアが議論をリードするだけでなく、場の「ノリ」をフィジカルに表現する試み。

  • エンビジョニング・センター内のエリアの1つ。3〜5年先の「未来の仕事環境」のプロトタイプを展示している。コンセプトは、流動的で変化に適応できるスペース。

  • 未来のデスク環境として展示されているもの。ディスプレイに映し出されるのは、見慣れたデスクトップではなく、従業員ごとにパーソナライズされた画面。

  • 「マイクロシェルター」と呼ばれる、パーソナルな「こもり」スペース。周囲からの視線をさえぎりながら、業務に集中したり、休憩を取ったりできる。

  • ディスカッションスペース。ホワイトボードでは画像やテキスト、映像などが一元的に扱える。またAIが議論の進行をサポートする。椅子やテーブルは自由に動かし、組み合わせることができる。

  • オフィス中心にあるタウン・ホール。従業員総出のオールハンズ・ミーティングがあれば、ここで開かれるイメージだ。置かれているパーツは、状況に応じてパズルのように組み合わせることが可能。

分断されず、それぞれがフレキシブルに
連携しながら1つの価値をつくるオフィス

「今、ワークプレイスには2つの両極端な形があります」とアンドリューズ氏は言う。1つは、閉ざされた個別のオフィスに長い廊下があるようなタイプのオフィス。コラボレーションをするには酷いものだ。一方は、コラボレーションに適したオープンプランの環境。しかし今回模索されたのは、そのどちらでもない、第三の方法である。

そのコンセプトを「スペクトラム・オブ・スペース」という。特徴はスペースのグラデーションだ。作業スペースのAとB、あるいはデジタルとフィジカルが分断されるのではなく、それぞれがフレキシブルに連携しながら、1つの価値をつくる。そのような流動的な空間である。アンドリューズ氏は言う。

「クラウドを使って仕事をすることが可能になり、全仕事がクラウドの中にある時、また仕事内容が随時変更し流動的で、チームもまた流動的に生成を繰り返している時、動かない仕切りに囲まれた環境で働くことは、もはや意味をなしません。チームは迅速にシフトしながら動くので、壁の中で仕事をすることは、困難になるのです。物理的に静止した環境は、デジタルの流動的な環境に合いません。非常にフレキシブルな環境をつくりたかったのです」

例えば、パーツを組み合わせることで椅子やデスクを組み上げるミーティングスペース。あるいは、議論の内容に応じて照明が変化するドーム。同じ形を長く留めているものは、このオフィスには存在しない。

世界は常に、予測を裏切りながら変化していく。そんな環境下で生き残るのは、変化が起こる時を感知でき、クリエイティブに革新的に対応できる組織だとアンドリューズ氏は考える。

「ただじっとしているだけでは、最適化は図れません。早く仕事ができることよりも、クリエイティブに、よりよい仕事をすることのほうが、重要なのです」

text: Yusuke Higashi
photo: Satoshi Minakawa

WORKSIGHT SPECIAL EDITION【Studio O+A】(2019.7)より

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