Workplace
Apr. 28, 2014
社会貢献意欲の高い人が交わり
異能のマッチングを図る
環境保全にコミットする人向けのコワーキングスペース
[Green Space]New York, USA
- 社会貢献意欲の高い人たちをつなげたい
- 日常的にマッチングが行なわれる環境
- 環境系のコワーキングスペースとして広く認知される
マンハッタンにある「グリーンスペース」は、環境保全にコミットする人材が集まるコワーキングスペースだ。現在、入居者はおよそ100名。交通の便に恵まれた立地から、ニュージャージー、ロングアイランド、ブルックリン、クイーンズ、ペンシルバニア等からも通ってくる。彼らの活動は実にさまざまだ。グリーンテクノロジー、オーガニックフードに屋上農園。貧困問題に取り組む人もいる。その立場も、起業家やNPO、フリーランスなど多様だ。
グリーンスペース創設者であるマリッサ・フェーンバーグ氏は、かつて環境保全を議論するグループ「Green Leader」に所属していた。そこに集まる人々に接するうちに考えたことがある。『彼らがもっと日常的に交流する場があれば、面白いマッチングが起こるのでは』。これがグリーンスペースのアイデアとなった。つまり、彼らにワークプレイスを提供し、同じ場所で働いてもらうこと。やがて入居者はごく自然にコミュニティを作り、グリーンスペース内でのコラボが始まるというわけだ。
入居希望者は事前面接で厳選する
もっとも、グリーンスペースはただ場所を用意するだけの会社ではない。フェーンバーグ氏自身、入居者同士のマッチングをサポートする役を担っている。
「よくあるのは、1〜2文の短いメールで、誰を探しているか教えてもらい、私が紹介するかたちです。例えば、スタートアップである入居者に、別の入居者である弁護士を紹介するとか。この場所を起点にして、ビジネスを一からスタートさせることだってできるんですよ」(フェーンバーグ氏)
マッチングの障害となるものは、しっかりケアする。入居希望者には事前の面接を行っている。まずは彼らの活動、ワークスタイルについてヒアリング。次にワークスペースをシェアするために必要な「お互いを尊重しあう考え方」を持つ希望者のみをスクリーニングする。「普通のオフィスなら100個あるステープラーも、ここではシェアされるので5つしかありませんからね」と笑うフェーンバーグ氏。こうして、グリーンスペースというコミュニティにふさわしい入居者のみを集めるのだ。
オープンな空間になっているラウンジスペース、デスクとは異なるメンバーシップ契約が必要。
創業: 2008年
売上高: 約100万ドル
経常利益: 非公開
従業員数: 1人
http://greenspaceshome.com
マリッサ・フェーンバーグ
コ・ファウンダー
シラキュース大学を卒業後、企業広報やマーケッター、ソーシャル・ベンチャーの立ち上げに携わる。2008年コ・ファウンダーとしてグリーンスペース設立に参画。
入居者に運営を手伝ってもらい
一体感のあるチームを作る
「ここで誰が、何をしているのか」を可視化するのも、マッチングを促す工夫の1つだと言える。壁面を飾る写真は、会社を経営しながら写真家としても活動する入居者の作品だ。
ネット上での交流も盛んで、メーリングリストには1万5000人が、Facebookグループには600人が登録されている。「ワークエクスチェンジ」は入居者が持ち回りでグリーンスペースの運営を手伝う仕組み。利用料が数日間無料になるという特典つきだが、それ以上のメリットも。
「彼らにとっては、ほかの入居者との親睦を深めるいい機会になる。グリーンスペースのオーナーシップを体験してもらうのもいいことだと思います。自分がこの場所の一部である、チームの一員であると実感することができますから」(フェーンバーグ氏)
一方、グリーンスペースの外部とコネクトできる機会も用意する。環境系のイベントや投資家向けにプレゼンイベントを呼び込むのはその一例だ。また最近では、環境系マーケティングをしたい大企業が、ブランチとして社員数名を滞在させるような動きが出ているという。
ワークプレイスではなくコミュニティを提供する場
空間デザインは、やはりエコロジーをテーマに感じさせるもの。古いオフィスビルを最低限の改装のみで使用している。レンガの壁はとくにフェーンバーグ氏お気に入りだ。家具類はすべてユーズド品とあって、チェアもデスクもみなバラバラのデザイン。どれも大学や企業から譲り受けたものだ。地元アーティストの手により設計された会議室には木材があしらわれ、素材感あふれる空間となっている。
グリーンスペースの創業から5年。環境系コワーキングスペースとして広く認知され、コロラドにも拠点を展開するまでになった。入居希望者は日に日に増えていき、現在はすべてのデスクが埋まっている状態だ。
「彼らが求めているのは、ワークプレイスではなくコミュニティ。同じ問題にコミットし、時には議論しあい、協働できるコミュニティで仕事をすることです。仕事するだけなら家でもできます。でも一人は寂しいですし、相談する相手もいません。私たちが直面している問題を解決するためにも、アイデアを交換しあい、フィードバックをもらえるコミュニティが欠かせないんです」(フェーンバーグ氏)
WORKSIGHT 05(2013.12)より
グリーンスペースのメンバーでもあり、自ら会社を運営している写真家が寄贈した写真がデスクスペースの壁を彩っている。
ミーティングルームの様子。オープンスペースで働いていても、プライバシーを必要とする時や誰かにアイデアをぶつけたい時はある。そうした時には契約内容に応じて会議室を使用する。ちなみに1カ月550ドルの契約だと、専用のデスクや無料のWi-Fiなどのほか、ミーティングルームを5時間使用することができる。
使われなくなった輸送用パレットを立てかけ、パーティションとして使用している。