このエントリーをはてなブックマークに追加

ユーザーの作品に囲まれて働き
Tumblrコミュニティに溶け込む

ビジュアルメインの多機能SNSの運営会社

[Tumblr]New York, USA

  • 変化の激しいWEB業界で独自の価値観を出す
  • ユーザーのインサイトを共有できるオフィス
  • ビジュアル表現のしやすいサービスとして認知される

画像やテキスト、Web上の記事などを投稿できる多機能SNSを展開するタンブラー。ニューヨークにある彼らの本社オフィスは、一見して「オフィスらしさ」を排除したものだ。

社員たちが身体を伸ばせる大きなソファに、フローリングの床、目を和ませてくれる植栽たち。オフィスフロアは開放的なオープンスペースで、同僚たちの会話が自然と耳に入ってくる。このリラックスした空間を例えるなら「自宅のリビング」が最も近いだろう。

タンブラー社のオフィスは、「タンブラー社の価値観、カルチャーとは何か」という問いに対する回答だ。新陳代謝の激しいWebサービス業界において同社がユニークな存在であり続けるには、独自の価値観、カルチャーを視覚化、共有することが望ましい。そのため同社はオフィスを「タンブラー社のショールーム」として捉えている。ここで仕事をしている限り、自分たちの独自性を見失うことはないというわけだ。

ユーザーの作品を買い取り社内に展示

例えば、壁面を飾るアートワーク。これらはすべて、タンブラーを利用するアーティストから購入したもの。専門の購入担当がいるが、ほかの社員も気に入った作品を見つければ購入を依頼することができる。ユーザーはどんなことを考えているのか。タンブラーはどんなユーザーに愛されているのか。壁面のアートワークは、そのイメージを全社で共有するためのツールだ。

「タンブラーはファンやユーザーを大切にする会社。そのための専門のチームもあります。ユーザーをケアし、コミュニケーションを図るチームで、ファッション、ゲーム、メディアといった分野に分かれています。ユーザーのニーズは何か、ユーザーと何か一緒にできないかと常に考えている」

そう語るのは、クリエイティブ・ディレクターのピーター・ヴィダーニ氏。ユーザーをオフィスに招いてのイベントもたびたび催されている。「昨夜もニューヨークのディベロッパーコミュニティのイベントを開き、食事や飲み物を振る舞った」と明かす。

創設者がニューヨーク育ちであり、会議室にはすべて、ニューヨークのビルの名前がつけられている。

創業: 2007年
売上高: 非公開
従業員数: 192人(2013)
https://www.tumblr.com

速いスピードで成長しているタンブラー。一枚の天板でつながるデスクは、コミュニケーションを促すだけでなく、急な増員に対応するための工夫でもある。

  • ミーティングルーム。デザイナーやエンジニアといった職種に関係なく、全員がシームレスなコミュニケーションを心がけている。

  • 閉じられたスペースのない、オープンなオフィス。互いの席が近く、ちょっとしたミーティングが自然に始まる。

  • 壁に飾られたアートワークは、すべてTumblrを利用しているアーティストの作品である。社員がユーザーから作品を購入することもしばしば。

  • このフロアだけは犬を連れてきてもいいことになっており、現在は3匹の犬がフロア内で自由に過ごしている。社員のアイデンティティを大切にしたいという社風の表れだ。

会話を楽しみ、リラックスしながら
仕事を進める文化

毎週金曜日はカフェテリアに社員全員を集め、全体会議を行うのが決まりだ。ランチをとりながら、各部署がその週に行ったこと、次週の予定などについてプレゼンする。ユーザーの声を直接聞く機会のない部署の社員もここでシェアできるという。

カフェテリアはまた、タンブラーにおけるインフォーマルコミュニケーションの中心でもある。約130人の社員たちが朝食、ランチ、イベントなどを通して週に数回集まるほか、思い思いの時間を過ごす場所だ。

食事の合間にはヨーグルト、チップス、フルーツなどが提供され、ドリンクセレクションも充実。そこで交わされるカオス的でオープンな会話を通じ、ユーザーの声はさらにシェアされていく。

「あらゆる場所で会話を楽しみ、リラックスしながら仕事を進めること。ここにもタンブラーの文化が表れている」とヴィダーニ氏。自宅のリビングを思わせるオフィス空間もその一例といえるだろう。

個性豊かな社員の「自分らしさ」を引き出す

また各部署の社員は個別のデスクを持たず、1枚のデスク天板を囲むようにして仕事をしている。社員同士を隔てるパーティションは皆無で、誰とでも話しやすい。役員たちでさえ閉じられた個室におさまらず、好きな場所で働いている。ちょっとしたミーティングであれば、デスク回りで十分。これも、タンブラー社のカルチャーを知らず知らずのうちに共有できるようにとの配慮だ。

プロダクトデザイナーがいるフロアには3匹の犬が走る。会社が飼っている犬ではない。このフロアに限り、社員が自由に犬を連れてきていいことになっているのだ。「犬を飼う会社は今時普通ですが、職場に連れてくるのは普通ではないと思います」とヴィダーニ氏は笑う。しかし、「普通ではない」とはタンブラー社のあり方そのものだ。

「ここで働いている人はみなsuper funny。おかしなユーモアを持っている。私自身、働き始めてからいつもそう感じています。タンブラーの文化としてそういった人を繰り返し雇っているのか、タンブラーが好きだと変わった人間にならざるをえないのか、どちらかですね」(ヴィダーニ氏)

そうした個性豊かな社員がリラックスしながら、自分らしい働き方を模索できる職場。そこには、どのようなユニークなアイデアも受け入れられる自由な空気が満ちている。

ビジュアルメインのSNSとして幅広く認知される

「どの社員も、皆ものすごく親切であることも共通しています。そもそも、創設者のデイビッド・カープは、私がこれまで会ったなかで最も親切な人間のひとり。とても謙虚で寛容です。それが周りに伝わるのでしょう。働き始めて間もない社員であっても、ここは自分の意見を遠慮なく言える安全な場所だ、 最も優れたアイデアが正しく選ばれる会社だと理解し、すぐに適応してくれます」(ヴィダーニ氏)

2007年のサービス開始以来、タンブラーは急成長を遂げた。テキストや画像など様々な情報を投稿でき、さらにデザインを自由に選ぶことで誰でも自己表現ができるSNS「Tumblr」。現在までに累計630億件以上の投稿がされるほど、ネットユーザーに浸透している。2012年5月に発表された米ヤフーによる買収に際しては、11億ドル(約1120億円)という額が提示された。

タンブラーがこれほど巨大な存在となった背景には、会社独自の価値観、カルチャーを共有できるオフィス、社員がリラックスし、活発にコミュニケーションできるオフィスの後押しがあった。

WORKSIGHT 05(2013.12)より

ラウンジチェアに深く座って作業をするこちらの男性は、タンブラーの役員。役員クラスであっても自由にオフィス内を動き回り、お気に入りの場所で仕事をしている。

オフィスに入ると、受付から執務スペースまで、すべての床がフローリングになっている。リラックス感を高めるグリーンも豊富だ。

十分な広さのあるカフェテリア。ケータリングの朝食と昼食、スナックやフルーツが毎日無料で食べられる。

RECOMMENDEDおすすめの記事

京都カルチャーを肌で感じる新しいホテル&アパートメント

[ホテル アンテルーム 京都]Kyoto, Japan

10年後、人工知能に取って代わられる職業とは

[松尾豊]東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 准教授

見えないものを見えるものにする。それが変革をもたらす唯一の解

[岩佐大輝]農業生産法人 株式会社GRA 代表取締役CEO

TOPPAGE
2022年7月、「WORKSIGHT[ワークサイト]」は
「自律協働社会のゆくえ」を考えるメディアへと生まれ変わりました。
ニュースレターを中心に、書籍、SNS、イベント、ポッドキャストなど、
さまざまなチャンネルを通じてコンテンツを配信します。

ニュースレターに登録する