このエントリーをはてなブックマークに追加

「若者」の価値を信じ、
「若者」の働きやすい職場をつくる

エネルギー業界専門のグローバル人材仲介会社

[Spencer Ogden]Singapore, Singapore

  • 若者を引きつけるカルチャーを作り上げる
  • 明るく開放的なオフィスと独自のインセンティブ制度を設計
  • 居心地のよさが仕事の成果を挙げ、会社の急成長に寄与

2010年創業と若い会社ながら、エネルギー業界専門のグローバル人材仲介会社として飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を遂げているスペンサー・オグデン。石油やガス、電力、再生可能エネルギーなどさまざまな分野の専門家を世界中のクライアントと結びつけている。本社をロンドンに置き、現在はスコットランドやマンチェスター、ヒューストン、ドバイなどにもオフィスを拡大。ここシンガポールは香港と並ぶアジアの重要なオフィスである。

スペース・マトリックス社が手掛けたシンガポールオフィスに一歩足を踏み入れると、そこに広がるのは、なんとゴルフ場を思わせるグリーンの芝。スペンサー・オグデンのCEO、デビッド・スペンサー-パーシヴァル氏(以下、デビッド氏)の公私におけるパートナーであり同社のオフィスデザインを担当するボニータ・スペンサー氏(以下、ボニータ氏)はこう語る。

「そもそも夫と私とは、スペンサー・オグデンを創業する際、20〜30代の若い社員がエネルギッシュに働ける会社を創ろうと思っていました。その考え方はもちろんオフィス設計にも通じています。今回、シンガポールオフィスを設計するにあたって最も強く考えたことは、『社員にエネルギーを与えられる環境にすること』でした。私たちはオフィスを歩いて自然の緑に触れることでエネルギーをもらえますよね。そのような環境をオフィス内に持ち込もうと考えました。グリーンの芝のように見えるのは、芝を模したカーペットなんです」

ヒエラルキーを廃した明るく開放的なフロア

確かにオフィス内を見渡すと、一面グリーンの広いスペースで若い社員が活き活きと働いているように見える。「社員がオフィスで快適に過ごせるよう、あまりかしこまった環境にならないように気を配りました。例えば役員室は英国紳士のクラブを思わせるデザインに、会議室はダイニングルームのように。会社はあくまでformalなところですが、デザインにinformalさを取り入れて、社員がワクワクしながら働けるような雰囲気作りを心がけました」(ボニータ氏)

CEOのデビッド氏は同社を創業する前に人材会社で20年間働いた経験がある。その会社もやはり、オフィスには当たり前のようにグレーのカーペットが敷かれ、グレーのブースがそこかしこにあったという。そうした経験がシンガポールオフィスの設計に役立っているようだ。

「社員の使うデスク一つとってもそうです。フロアをご覧いただければおわかりになる通り、デスクはスクエアなものではなく、円卓を用いています。これは、円卓のほうが社員同士の会話が活発になるからです。デスクは固定制になっていますが、一般の社員は半年に一度席替えをして環境をリフレッシュするようにしています。また、マネージャークラスの社員は席を固定させておらず、一般社員と同様に円卓の空いている席を使って仕事をしています。これは、マネージャークラスの社員と一般社員が同じ円卓を共有することで組織の階層をできるだけ取り払いたいという思想の表れでもあるのです」(ボニータ氏)

グローバルに事業展開するスペンサー・オグデン。シンガポール・オフィスは電力部門が主力だ。

創業:2010年
売上高:5億300万ユーロ(8,350万ドル)
従業員数: 308人(2013)
http://www.spencer-ogden.com

フロアには、ゴルフのパットの練習ができるスペースも。

  • グリーンのカーペットが敷き詰められたフロア。採光もよく、ビルの中にいながら外にいるかのような開放感を味わえる。

  • オフィス内にはこのような円卓が複数置かれている。社員間のコミュニケーションを活発にするための工夫である。

  • 英国紳士のクラブを思わせる内装の役員室。気分をリラックスさせる効果がある。

  • こちらは中国風の会議室。多民族国家のダイバーシティを表現。部屋はガラス張りになっており、風通しのよさを感じさせる。

若者のやる気を引き出す
さまざまなインセンティブ制度

オフィス環境だけではない。オフィスの立地に関しても社員への気配りがなされている。「通勤の際のアクセスがいいのはもちろん、仕事終わりにバーでお酒が飲めたり、ショッピングを楽しんだりといったことができることが必要です。工業地域のようなロケーションはタブーですね」(ボニータ氏)。シンガポールにオフィスをつくる際には60カ所もの候補地が挙げられていたが、上記のようなポイントや眺望のよさなども考慮に入れてこの地に決めたとのことだ。

最近の若者はクールな職場を強く希望し、給料に対して決して強いこだわりはなく、それでいて一つの職に長く留まらない傾向があるそうだ。そのため、同社ではユニークなインセンティブ制度も採り入れている。月々の目標を3カ月連続で達成した社員にはご褒美の出張を与えているそうだ。ボニータ氏は言う。

「リゾート地から近い拠点へ1週間送り出しています。その1週間、社員は出張先のオフィスに通勤することになるのですが、短時間労働でOK。こうしたインセンティブが会社の文化の一つとして強く作用しており、社員もこの会社で働けてよかったと思ってくれているようです」

自社流の教育を施すため、新卒採用に注力

その他にも社員を楽しませる工夫が同社には数多く見られる。毎日1時間、「パワー・アワー(Power Hour)」と名付けられた時間帯があり、この間、社員は立って仕事をしなくてはならない。デスクワークで凝り固まった体をほぐすための試みだろう。「ドレスアップ・フライデー」というイベントもあり、この日は「1980年代風」など決められたテーマのもとで社員が思い思いの服装で出社する。オフィス環境に非日常を持ち込むことで、フロアが活性化すること請け合いだ。

しかし、なぜ同社は「若者のためのオフィス環境」をこれだけ重視するのか。それには、同社の人材戦略が大きく関係していた。「私たちは社員を独自に育成することに注力しているからです。そのため、新卒の学生を採用して入念なトレーニングを実施しています。もちろん、新卒採用や新卒研修は会社として多大な投資を行っているに等しいことですが、それよりも自社流の教育を経て成長した社員が増えることに重きを置いているのです」(ボニータ氏)

出勤が楽しみになるオフィスに、社員からの評判は上々

会社の空間作り、社員をその気にさせるインセンティブなど、さまざまな工夫が施された同社。当然ながら、社員の満足度も高いようだ。「オフィス設計の段階でかなりの時間やエネルギーを費やしましたが、社員はこの環境を非常に気に入ってくれていて、個人的にお礼のメッセージをもらうこともあるくらいです」(ボニータ氏)

ただ、それゆえに少し問題も起きているようだ。ボニータ氏は続ける。「会社の居心地がよすぎて、定時になってもなかなか家に帰らない社員がいるのです。オフィス清掃員が入る際に社員を追い出さなければならず、それがちょっとした悩みでしょうか(笑)。うれしい悲鳴ですよね」

若い頃、自身がよく働いたという創業者のデビッド氏。一生懸命に働く若者の気持ちを理解できるからこそ、同社は若者にとって出勤するのが楽しみになるようなオフィス環境作りに注力している。活気溢れるオフィスを見れば、彼らの満足度は一目瞭然だ。

[データシート]
コンサルティング/インテリア設計:Space Matrix Design Consultants Pte Ltd

WEB限定コンテンツ
(2014.4.15 シンガポールの同社オフィスで取材)

フロアの端にはオープンなキッチン。コーヒーを片手にカジュアルな打ち合わせを行う姿も見られた。


オフィスの入るビル施設として社員が自由に利用できるスポーツジムとプールが併設されている。


オフィス内には、活き活きと働く若い社員の姿が目立つ。

RECOMMENDEDおすすめの記事

ドルビーの新たなチャレンジが始まる

[Dolby Laboratories]San Francisco, USA

カムアウトできる環境が企業価値を高める

[村木真紀]虹色ダイバーシティ 代表

オフィスに必要なのは「効率の悪い余白」

[宇田川裕喜]株式会社バウム 代表取締役、クリエイティブディレクター

TOPPAGE
2022年7月、「WORKSIGHT[ワークサイト]」は
「自律協働社会のゆくえ」を考えるメディアへと生まれ変わりました。
ニュースレターを中心に、書籍、SNS、イベント、ポッドキャストなど、
さまざまなチャンネルを通じてコンテンツを配信します。

ニュースレターに登録する