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シンガポール最大の銀行が行った
オフィス変革とは?

シンガポールが誇るアジア有数の銀行

[DBS]Singapore

  • 効率性と生産性の向上
  • ソーシャルな場やオープンコミュニケーションを促すスペースを拡充
  • 従来は見られなかったコラボレーションが見られるように

シンガポールに本社を置くDBSは、1968年に政府系投資銀行「シンガポール開発銀行」として誕生した銀行だ(2003年7月に現在の名前に改名)。現在では世界17カ国に250以上の支店を構える、アジアでも有数の金融サービス会社として知られている。格付けを見ても、スタンダード&プアーズで「AA-」、ムーディーズで「Aa1」(いずれも2014年4月末時点)と、極めて高い信用を得ている。

ここ、DBSアジア・ハブは、DBSがシンガポールに構える3つの拠点のうちのひとつ。技術関連の部署、オペレーション関連の部署、サポート関連の部署が入っているほか、支店業務のシミュレーション研修やリーダーシップ研修など各種研修にも使われている施設である。「建物は9階建てで、面積は約34万平方フィート(約3万1587平方メートル)あり、ここではDBSの全社員のおよそ40%にあたる、約3000人の従業員が働いています」と語るのはDBSでCRE(企業不動産)戦略部門でシニア・ヴァイスプレジデントを務めるアーウィン・チョン氏だ。

「アジアの金融市場はとてもダイナミックに変動し続けています。そうした環境下で私たちDBSがアジアで最も支持される銀行になるため、2007年に『front and hub』という計画を立てました。これは、各チームの関係をより強固にし、会社としての効率性と生産性を促進することを目指したものです」(チョン氏)

問題解決の早い対面でのコミュニケーションを重視

かつてバラバラに存在していた拠点のいくつかをDBSアジア・ハブにまとめたということもあり、社員間のコミュニケーションを促すオープンスペースの充実ぶりには目を見張るものがある。

「ミーティングスペースを増やしたのはもちろんなのですが、その他に、社員が予約することなく自由に使えるテーブルやソファのあるスペースを拡充しました。社員同士のコミュニケーションはメールで行うことももちろん可能ですが、対面で話すほうが問題解決も早いですよね」とチョン氏は語る。

従来は外のカフェなどを使ってちょっとした打ち合わせをしていた社員が多かったようだが、理想的なシチュエーションとは言いがたい。「その点、社員同士が自由に会話ができるこのような場所が社内に多くあるのはいいですね。安全なのはもちろん、異なるチーム間に思いがけないコラボレーションが生まれたり……という可能性もありますから」(チョン氏)

DBSアジア・ハブは、シンガポールの先端ビジネス関連企業が集うチャンギビジネスパークにある。

創業:1968年
売上高:50億900万シンガポールドル(2013)
従業員数:約19,000人(2013)
http://www.dbs.com.sg/index/default.page

オフィスのそこかしこにこうしたオープンなミーティングスペースがあり、社員は迅速なコミュニケーションに活用している。

  • 各フロアに設けられた「Social Hub」。デスクのあるオフィススペースとガラスで仕切られたオープンスペースだ。

  • 社員はどこにいてもWi-Fiにアクセスできるため、シームレスな働き方が可能となった。

  • 天井に木板を貼ることでアジア的な雰囲気を演出している。

  • シンガポールの文化が感じられるカフェテリア「Melting Pot」。ランチタイムはたくさんの社員で賑わう。

フロアや部署の隔てなく
全社員が利用できる「Social Hub」

社員のコミュニケーションを促す工夫として特にユニークなのが、「Social Hub」と呼ばれるオープンスペースだろう。「かつて、ミーティングルームは各フロアのオフィススペースの中にあり、たとえば9階で働く社員は9階のミーティングスペースしか使えませんでした。自分のフロアとは異なるフロアには、セキュリティ上そもそも入ることができなかったからです」とチョン氏は言う。

そこで、ミーティングルームを、各フロアのオフィススペースの内側ではなく、あえて「外」に置いた。これが「Social Hub」だ。各フロアに上がるとまずはSocial Hubが広がっていて、その奥にガラスの仕切りがあり、その向こうにセキュリティの厳しいオフィススペースがあると言えばイメージしやすいだろうか。

「このSocial Hubは全フロアに設けています。『全館のどこでも誰もが働けるスペース』というコンセプトなので、移転前のように自分のフロアだけに縛られることなく、たとえば5階で働く人が7階のSocial Hubを使うこともできます。館内におけるWi-Fi設備も整えており、ノートパソコンを持ってSocial Hubで働く社員も多く見られます。ミーティングをする社員、ランチをとる社員、ちょっとソファで休憩する社員……と、使い方は人それぞれですね。フロアや部署の隔てなく、たくさんの社員が思い思いの形でSocial Hubを活用しています」(チョン氏)

シンガポールの空気に包まれたカフェテリア

「Melting Pot」という名のついたカフェテリアにも工夫が凝らされている。シンガポールの文化を感じさせるインテリアがそこかしこに見られるのだ。「たとえばチェアは中国式の陶器でできたものですし、籐でつくられたソファはマレーシアやインドネシア伝統の漁法で使われる籠をイメージしてデザインされました。天井にあるサークル上のインスタレーションは、飲茶を蒸す際に使うわっぱをイメージしたものです」(チョン氏)。

シンガポールの文化は中国、マレーシア、インドの文化が融け合って生まれたものだと言われているが、まさにその通りの名前がつけられたわけだ。収容人数300人を誇るMelting Potは、テーブルを動かしてスペースを広げ、ホールとして使うことも可能。ステージやスクリーン、プロジェクター(2セット)も完備されているため、多様な使い方ができるスペースとなっている。

その他にも、社員であれば誰でも使える24時間営業のスポーツジムも完備。ヨガやティラピスのインストラクターによるレッスンをランチタイムや夕方に受けることもできるそうだ。

移動直後は慣れなかった社員間にもコラボレーションが

もちろんオフィススペース自体にも働きやすさを追求している。そのひとつが、窓際のスペースの使い方だ。窓が大きく、自然光を多く採り入れられる設計になっているため、窓際には極力個室を設置しないようにした。つまり、社員が働くスペースと窓との間に自然光を遮断するものを置かないようにしたのだ。DBSアジア・ハブ以降にできたDBSのオフィスでは、窓際には個室を一切作らず、全ての窓を社員に開放する作りにすることに成功したという。

このようにさまざまな工夫がなされたDBSアジア・ハブだが、社員からの評判はどうなのだろう。チョン氏によると、「オフィス移転直後と半年後に、同じ設問で2回のアンケートを採りました。移転直後は新しいオフィスに慣れない人も多かったようですが、半年後のアンケート結果を見ると、移転前のオフィス環境と比較してよくなったと感じる人が劇的に増えていました」とのこと。「これまでよりも他の社員とコラボレーションできるようになった」と、まさにDBSの求める効果を実感している社員も多いようだ。

コンサルティング(ワークスタイル):自社
インテリア設計:HBO+EMTB
建築設計:自社

WEB限定コンテンツ
(2014.5.19 シンガポールの同社オフィスを取材)

Social Hubには自動販売機も完備。飲み物や軽食を無料で提供している。


社員が使えるスポーツジム。ランチタイムや夕方に多くの社員が体を動かしに訪れる。

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