Workplace
Dec. 8, 2014
帰属欲を刺激し、人の輪が増える
クラブ的コワーキングスペース
国際都市にふさわしい多様性の実現を追求
[The Co]Singapore
- グローバルなコワーキングスペースを作る
- 企業の進化に応じたサービスとブランドを提供する
- コミュニティが自己増殖する存在へ
入居者たちが期待するのは、コワーキングスペースに宿る、コミュニティの自己増殖する力だ。
シンガポールにあるコワーキングスペース「The Co」には、現在約40社が入居している。その大半は、モバイル、ビッグデータ、ソーシャルメディアなどデジタル系のスタートアップだ。そのうちローカル企業は2割、海外企業が8割を占めるのは、国際都市シンガポールならでは。
なかには、米国で1000人規模の社員を抱える企業も含まれる。彼らの思惑はこうだ。社員数人を送り込みアジア拠点を作りたい、オフィス空間はごく小さくてかまわないが、インフラの質を落とすつもりはない。そこで「The Co」を探し当てるのだ。
会員企業は、来訪者対応や郵便物等の業務を一手に引きけるコンシェルジュサービスのほか、セクレタリーサービス、コピー、配送手配などの各種サービスを享受できる。だが「The Co」を他のコワーキングサービスと差別化しているポイントは別のところにある。
「それらをハード面のサービスとするなら、当社の付加価値となっているのは、ソフト面のサービスです」と語るのは、ジェネラルマネジャーのミシェル・ウー氏。すなわち、メジャーカンパニーと同等の機能を持つオフィス空間に、パワフルな「コミュニティ」の要素を導入することである。
「社名自体、Cowork、Collaboration 、Community、Connectに由来しています。会員たちに一つのコミュニティに帰属してもらうことで、コラボレーティブで活気があり、スタートアップを後押しできるスペースを作りたいのです」(ウー氏)
1〜20人規模の会社が入居可能で、現在は約40社が入居している。そのうち2割がローカル企業、8割が海外企業。
創業 : 2013年
収容人数 : 約250人
入居社数 : 約40社
http://jointhe.co/
見る者に劇的なインパクトを与える螺旋階段。入居者に同じ体験を共有してもらうことで、コミュニティに対する帰属意識を高めている。
コミュニティの成長と
増殖を促す空間
「The Co」内部は、コミュニティの成長、増殖を促すディテールに満ちている。4〜7階は各会員の占有スペースだが、それ以外のフロアは、どこにいても別の入居者の存在を身近に感じられるもの。3階のコワーキングスペースは、個別のブースとオープンなデスク、ミーティングスペースと多彩な展開。地下1階はオープンラウンジ「The Cove」だ。
「新規案件に際して新しい人材が必要になったとき、『The Cove』など公共のスペースを利用して、偶然隣り合った入居者に声をかける、というシーンがよく見られます。プロフェッショナル同士がオープンスペースで交流し、お互いに能力を補完できる相手を探しているのです」(ウー氏)
「コミュニティ・マネージャー」レイ・アー氏の存在も、コミュニティの成長に一役買っている。会員に対してどんな人材、どんな会社が入っているか頻繁にレビュー。同時に、彼らがどんなニーズを持っているのか吸い上げている。リクエストがあれば、直接声をかけて会員どうしをマッチングする。アー氏がコミュニティ作りの専門家となり、会員どうしのコラボレーションが生まれやすい空気を醸成しているわけだ。
「要するに、他のコワーキングスペースとの最大の違いは、『人』なのです。一度退去した会員ともネットワークを維持していますし、彼らがまた戻ってくることも頻繁にあります。ここに強いコミュニティがあり、みなが帰属意識を持っているからでしょう」(ウー氏)
コンサルティング(ワークスタイル):自社
インテリア設計:Ministry of Design, M Moser
建築設計:ipi7Workshop in conjunction with Ministry of Design
WORKSIGHT 06(2014.10)より
コワーキングスペース内の個別のブース。
各レジデントフロアは特定の色が割り当てられている。写真は「紫」のフロア。世界各国の言語で「紫」をあらわす言葉が各部屋名になっている。