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生活ありきの仕事環境がクリエイティブ・カルチャーを生む

「生活の一部としての仕事」。人間本来のあり方を模索するスタートアップ

[Envato]Melbourne, Australia

  • ベンチャー企業としての持続的な成長
  • 仕事と生活を分けないフレキシブルなワークスタイルをつくる
  • 豪州の「最も働きたい会社」として評価される

オーストラリアを拠点にクリエイターの制作物を仲介するデジタルマーケットプレイスを展開するエンバト。彼らはまたオーストラリアの「働きたい会社」ランキング上位の常連組である。

人気の理由は、「仕事は生活の一部」との哲学に裏打ちされたワークスタイルだ。彼らのオフィスに足を踏み入れた者は直感できるだろう。「木」をモチーフとしたセミクローズドスペースや、地元アーティストの手による壁面の絵画は、会社の「外」と「内」の境界を無理なく崩している。同社HRディレクターのジェームス・ロウ氏は言う。

「かつては仕事と生活が分かれていて、だからこそワーク・ライフ・バランスが注目されました。でも時代は変わった。いまや生活の一部として仕事があり、また家族や人生の楽しみがあると考えるべきでしょう。オフィスを設計するにあたっても、仕事と生活を分けない、フレキシブルなワークスタイルを目指しました」(ロウ氏)


100年前にはワインの保管庫として使用されていた建物。

創業:2006年
売上高:非公表
純利益:非公表
従業員数:180人
http://www.envato.com

  • キッチンスペース。新鮮な果物や飲料は置いてあるが、食事は提供しない。「残業しないといけないと感じてしまう」ためだという。

  • 地階にある中庭は緑豊か。オフィスのデザインコンセプトが木であるように、「外」にある自然を「中」に取り込む発想。

  • 至る所にイメージボードが設置されている。

  • 一人で作業に集中したい時にはこうしたスペースも利用する。

  • 開発メンバーはチーフとミーティングルームのガラス壁を使って進捗確認をする。

フレックス制や在宅勤務はもちろん
自作デスクの使用もOK

スタンディングで仕事をするもよし、自分の背丈に合ったデスクを自作するもよし。「足りないものがあれば作ればいい」というカルチャーが浸透しており、TV会議システムも、ラップトップとデジタルカメラで自作してしまうほど。

コアタイムは10時から16時と余裕があり、社員は朝夕を思い思いに過ごしている。週に1度は在宅勤務ができるルールだが、さらに頻度を増やしていく予定だ。仕事の成果さえ上げていれば、時間の使い方は自由。子供の送り迎えや家事、通院や趣味、その合間に仕事をすればいいのである。

社内キッチンであえてフルーツと水だけに絞り食事を提供しないのも、「残業しないといけないと感じさせてしまうから」とのこと。社員の生活時間を削る要素は、状況が許す限りゼロに近づける方針だ。


社員が自分の背丈に合わせて自作したスタンディングデスク。「足りないものは自分でつくる」のが同社のカルチャー。

  • 執務エリアの全景。

  • 壁面には地元アーティストの手による絵画が。「典型的オフィスの雰囲気」を崩している。

  • 全員が利用するカフェテリアに飾られた社員たちの顔写真。

  • イベントや会議に使われるスペース。

  • ラップトップとウェブカメラを接続し、それをキャスターに載せて移動させている。これで遠隔地とミーティングができる。

全員の人生やワークスタイルを
尊重できる会社へ

現場で開発チームを率いるプログラム・マネジャーのアドリアン・フィットラーニ氏も次のように語る。

「オフィスに長くいなくてもいいんです。海外にも90名ほどの社員がいますが、皆の都合の良い時間に仕事をしてもらっています。これからは旅好きにも働きやすい環境をつくるつもりです。例えば1年のうち3カ月は世界中のどこからでも仕事をしていい」

「とにかく全員のワークスタイルを尊重するのが目標」とロウ氏の言葉には躊躇がない。仕事ありきの生活ではなく「生活ありきの仕事」。オーストラリアを超えてアジア、アメリカ、ヨーロッパから優秀な人材が集まってくるのも、この哲学故だろう。ここには、彼らが思う人間の自然な姿があるのだ。

コンサルティング(ワークスタイル):Büro
インテリア設計:Büro
建築設計:Büro

WORKSIGHT 08(2015.10)より

text: Yusuke Higashi
photo: Masahiro Sanbe


HRディレクター
ジェームズ・ロウ
James Law


プログラム・マネジャー
アドリアン・フィットラーニ
Adrian Fittolani

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