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夢の実現をサポートするクラウドファンディング

行政や公共機関の資金調達も担う「Readyfor」

[米良はるか]READYFOR株式会社 代表取締役

Readyfor(レディフォー)は日本初のクラウドファンディングとして2011年3月にサービスを開始しました。

プロジェクト(掲載案件)を企画・実践する「実行者」がReadyforのサイトにアイデアを掲載し、賛同する「支援者」が資金を提供します。目標金額に達成すると実行者は支援者に対して、商品やイベント参加の権利など金銭以外のものでお返しをするという、購入型クラウドファンディングで出発しました。2015年12月には寄付型クラウドファンディングも開始しています。

購入型・寄付型のいずれも掲載料は無料で、弊社はキュレーターという担当者をプロジェクトごとに配して、相談に乗るなどのバックアップを行います。支援金が目標に達した場合のみ、手数料17パーセントを受け取る仕組みです。

これまでに掲載したプロジェクトは5,500件以上。支援金は日本最多の22万人から32億円以上を集めるなど、おかげさまで順調に拡大を続けています。

社会的にインパクトの大きなチャレンジが増えた2016年

2016年を振り返ると、いくつかのトレンドが浮かんできます。1つは、まちづくりや災害復興支援、地域文化の活性化など、ソーシャルなプロジェクトが増えたこと。世の中をよりよくするようなプロジェクトは以前からよく掲載されていましたけど、2016年は特に増えた印象です。

もう1つは支援金の規模が2015年より格段に大きくなったことです。月に1、2件は1,000万円を超えるプロジェクトが成立していますが、2016年は例えば5万円台のレーザー加工機「FABOOL Laser Mini」の販売プロジェクトに6,000万円、下関の施設「ウズハウス」をリノベーションして地域活性化を促すプロジェクトに4,400万円が集まるという具合に、より大きな額の支援が成立しました。

個人のチャレンジだけでなく、社会的にインパクトの大きなチャレンジが増えたことの表れです。資金調達の手段として、より幅広い方々に認知してもらえるようになったことは率直にうれしいですね。

税金だけに頼らない、多様化する公共機関の資金調達手法

また、実行者として利用してくれる組織のすそ野も広がりました。2015年までは個人やグループ、小規模団体のプロジェクトが多かったのですが、2016年は例えば国立科学博物館や大学、自治体なども実行者として名前を連ねています。

国立科学博物館のプロジェクトは、日本人のルーツを探ることを目的に3万年前の航海を再現しようとするものです。2,600万円の支援金を集め、「READYFOR OF THE YEAR 2016」のコミュニケーションアイデア賞を受賞しました。

自治体の案件では、震災で全壊した岩手県久慈市の水族館「もぐらんぴあ」の復活プロジェクトや、宮城県とReadyforのコラボレーションで、宮城の農業を応援する「みやぎ 食と農のクラウドファンディング」も立ち上がっています。

防災への備えや予防医療に関係するプロジェクトも増えました。例えば、災害時に安心しておいしく食べられる備食を本の形の箱に詰めた「東京備食」の生産・販売を支援するプロジェクトも、目標を上回る支援金が寄せられました。

公共やそれに近い領域のプロジェクトが増えたということで、補助金などの税金だけに頼るのでなく、資金調達のあり方が多様化していることを実感します。事業者や研究者、行政関係者など、それぞれの人がそれぞれのやりたいことに向かって、広く社会の人に支援を呼び掛けて資金調達に成功している。その一端を担えることは、私たちにとっても誇らしいことです。

支援者にとってもリスクを分散できる

もう1つ、2016年のトレンドとしては「地域発の創業」が挙げられます。そもそも2015年までにも地域で新しい企業を作る、地域の企業が新規事業やイノベーションを創出する、あるいは地域密着型のカフェを作るといった案件が増えていたんですね。

小規模でまだ実績のない事業は金融機関も融資をしにくいですが、クラウドファンディングなら財政的な担保はいらないし、多くの人からお金をノーリスクで集めることができます。そうしたメリットに着目いただいたこともあって、2016年は地方銀行や信用金庫など地域の金融機関とも連携し、規模の小さな案件をReadyforを通して応援するようにしたところ、地域発の創業案件のさらなる拡大につながったというわけです。

例えば、これは秋田県の北都銀行からご紹介いただいた案件ですが、地元の元料亭を「あきた舞妓」がお茶や踊りを披露する文化産業施設としてリノベーションするプロジェクトに1,400万円もの支援金が寄せられました。実行者は20代の女性です。私も20代で創業を経験した身なのでよくわかりますが、若いと起業の元手となるような実績や資産がないので、金融機関の融資を取り付けるのが本当に難しいんです。そういう人にとって、1,400万円はものすごく価値が大きい。チャレンジに向けて背中を押してもらえます。

お金を出す側にしても、誰か1人が全額負担するのでは事業が失敗したとき大きな損失になりますが、多くの人が少しずつ負担するのでリスク分散できます。実行者にも支援者にも使いやすいツールということで、クラウドファンディングは資金調達の一手段として地域の事業にも今後もっと広まっていくのではないかと見ています。


Readyfor は2011年3月、米良はるか氏が東京大学発ベンチャー企業・オーマ株式会社にて日本初のクラウドファンディングとしてリリース。事業拡大を受けて2014年に米良氏がREADYFOR株式会社を創業、オーマより事業譲受して現在に至っている。
https://readyfor.jp/


READYFORではその年の優れたプロジェクトを「READYFOR OF THE YEAR」として選定している。2016年度は、「FABOOL Laser Mini」と「ウズハウス」のプロジェクト、および養育困難な乳児を養親希望者に託す「赤ちゃん縁組」プロジェクト(支援金額2, 900万円)の3件が大賞を受賞。ほか、18件のプロジェクトが部門賞を獲得した。
https://readyfor.jp/awards/oftheyear2016

「国立科学博物館 新たな冒険! 3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」
https://readyfor.jp/projects/koukai

「震災で全壊した久慈市の水族館『もぐらんぴあ』を復活させたい!」
https://readyfor.jp/projects/kujishi

「みやぎ 食と農のクラウドファンディング」
https://readyfor.jp/lp_miyagi

「食べられる防災ブック『東京備食』先行発売開始!」
https://readyfor.jp/projects/tokyo_bishoku

「一口ごひいきさん募集!元料亭を改修し秋田美人に会える茶寮OPEN」
https://readyfor.jp/projects/sen

やりたいことの全てをかなえていく、
それがReadyforのミッション

今では月に200件ほどのプロジェクトが新たに登場していますが、サービスを開始した2011年は年間の掲載案件数はわずか50件ほど。続けてこられたのは、創業したのが大学院1年生のときで、収益性や経営についてあまり考えていなかったからです(笑)。Readyforを使ってくれる人たちがいて、その数が少しずつでも増えていることが単純にうれしかったですね。

社員が増えた今でこそ、少しは経営や収益性についても考えをめぐらせるようになりましたけど、それでもやはり、やりたいことの全てをReadyforの場でかなえていくのが私たちのミッションだと考えています。だから掲載するプロジェクトの方向性や内容には特に制限を設けていません。

どうしたら実行者の夢を具現化するところまで持っていけるか

ただ、支援者のことを考えると応募案件の全てを掲載するのは無責任ですから、計画が現実的に細部まで練られているかどうか、実行可能性についてはしっかりと確認させてもらいます。実行者にヒアリングしても「やってみないとわからない」というようなリスクファクターについては、その事実をきちんと支援者にお知らせします。

これがReadyforの1つの価値だと思っています。最近になっていろいろなクラウドファンディングのプラットフォームが登場していますが、実行者も支援者も自由に使えるタイプのものが多いようです。

でも私たちは利用してくださる方々の想いを大切にしていきたいので、実行確度という点において審査を重視しますし、確度の低いプロジェクトについては、キュレーターが相談にのって計画を詰めるお手伝いもします。どうしたらその人の夢を具現化するところまで持っていけるか。そこは私たちが一番力を入れているところです。

PRやマーケティングのツールとしての利用価値も

いろいろな方のチャレンジを集めているプラットフォームなので、それを多角的に応援できるように事業の枝葉も伸ばしていきたいと思っています。企業との協働はその1つですね。

Readyforにアイデアを載せるということは、応援してくれる仲間や支援者を可視化することにもつながります。応援してくれる人が多かったり、支援金額がたくさん集まったりするのなら、そのアイデアは妥当性が高いということ。ですからクラウドファンディングはお金を集めるだけでなく、PRやマーケティングのツールとしても利用価値があるわけです。

また、Readyforには社会性の高いプロジェクトも集まっていますし、メルマガやフェイスブックで応援したい人や企業をつなぐコミュニケーション機能も充実しています。そこに着目した企業から、CSRやマーケティングの文脈で連携のお誘いをいただくこともありました。そこで、企業参画のフレームとして作ったのが「マッチングギフトサービス」* です。今後は参加企業の拡大も含めて、さらにこのサービスに厚みを持たせていきたいと考えています。

多くのリソースを持つ企業が支援に参加してくれれば個人の実行者や支援者にとって大きな力になりますし、企業にとってもプラスの効果が得られます。挑戦する人、応援する人、そして立場も持つリソースも違う人々がみんなでともにハッピーになれる、そんなプラットフォームでありたいと思っています。

WEB限定コンテンツ
(2016.11.4 文京区のREADYFORオフィスにて取材)

text: Yoshie Kaneko
photo: Kazuhiro Shiraishi

* マッチングギフトサービスは、多くの人から共感を集めてクラウドファンディングを達成したプロジェクトに対し、企業も支援金を上乗せして応援する仕組み。
2017年1月現在、ジェイコムがこのサービスに参加。同社は資金提供のほかにプロジェクト活動の映像化・メディア公開も含めて支援に取り組んでいる。

米良はるか(めら・はるか)

READYFOR株式会社 代表取締役。1987年東京生まれ。2010年、慶應義塾大学経済学部卒業。2012年、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了。大学院在学中にスタンフォード大学へ留学し、帰国後の2011年3月、クラウドファンディングサービス「Readyfor」を立ち上げる。2014年7月に法人化し、代表取締役に就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出され、ダボス会議に日本人史上最年少で参加。内閣府 国・行政のあり方懇談会 委員など、国内外の数多くの会議に参加している。‎‎

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