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ベルリンのライフスタイルが反映された
「マインドと魂の出会う場所」

テルアビブ発のコワーキングスペース

[Mindspace]Berlin, Germany

  • ワークスペースの機能を超え、ビジネス以外の出会いも生まれる場を作りたい
  • コミュニティのライフスタイルを反映した場と仕組みを作る
  • フリーランスから大企業まで集まるコミュニティが形成された

ベルリンではここ数年、コワーキングスペースが急激に増えている。最も有名で歴史が長いのがBetahausとSt. Oberholzだが、2016年にオープンしたばかりのMindspaceには現在、特に熱い視線が注がれている。

Mindspaceは、実はドイツの企業ではなく、「海外組」である。創業はイスラエルのテルアビブ。テルアビブはイスラエルの中でも特にスタートアップが多く集まる都市であり、コワーキングスペースの激戦区だ。創業は2013年。当時のことを共同創業者のヨータム・アロイ氏(以下、アロイ氏)は振り返る。「FacebookやAOL、その他著名なベンチャーキャピタルの拠点があり、『テルアビブのシリコンバレー』と呼ばれる場所で私たちは事業を始めました。常にクリエイティビティ、デザイン、イノベーションが感じられる事業が生み出せる場所を作りたいと強く思っていましたね」。

ほどなくしてテルアビブで一定の成功を収め、満を持してベルリンに進出してきたのが2016年、というわけだ。しかし、世界展開を進める上で、ニューヨークやロンドンといった都市も選択肢の中にはあったはず。それでもベルリンを選んだ理由をアロイ氏はこのように語る。「それらの都市はビジネスハブとして既に成熟しています。その点においてベルリンは、まだまだ発展途上。しかし、クリエイティビティ、イノベーション、多様性に溢れた素晴らしい都市です。世界中のあらゆる場所から起業家が集まっているインターナショナルなハブでもある。そして、スタートアップはもちろん、サービスプロバイダーやクリエイティブエージェンシー、PRエージェンシー、IRエージェンシー、ベンチャーキャピタルも多い。私たちはこれからの成長が見込める場所で『最初の開拓者』になりたいと思っていました。ベルリンを選んだのは、私たちにとっては自然な選択だったと思っています」

革新的なデザイン、革新的なスタイルで注目

ベルリンへの進出を決めるにあたり、Mindspaceはベルリンという都市を徹底的に調査した。「Mindspaceを出すのにベストな場所、建物を調べたのはもちろんですが、都市の仕組みも学びました。ベルリンの人々の働き方、ライフスタイル、現在彼らが働くオフィスの状況などについても勉強しましたね」(アロイ氏)

そしていざベルリンにオープンさせてみると、瞬く間に人気のコワーキングスペースとなった。その要因として挙げられるのは、まず立地の良さ。Mindspaceがあるのは、高級なホテルや百貨店、レストランの立ち並ぶ、ベルリンでも屈指のショッピング街であるフリードリヒ通りだ。日本で言うと銀座にワークスペースを持つ感覚なのだろうか、ロケーションに惹かれて利用する人が多いそうだ。

さらに、「デザインや雰囲気に惹かれ、『ここにいたい』と感じてもらえることが多いようですね」(アロイ氏)。多種多様なコワーキングスペースの存在するベルリンにおいて、革新的なデザイン、革新的なスタイルの場所として存在を確立させることに成功したのだ。

Mindspace外観。

創立:2014年
会員数:約850人
オープンスペースデスク:€250
プライベートオフィス(個室):€950~

  • Mindspaceの魅力、充実したコミュニケーションエリア。

  • コミュニケーションエリア。ソファだけでなく、ハイカウンター風の席もある。

  • コミュニケーションエリア。落ち着いた、アットホームなデザインだ。

  • コミュニケーションエリア。会員が集まり、ミーティングが行われていた。

  • 会員同士のコミュニケーションを促進させるキッチンスペース。

  • 色使いなど、全体的にベルリンらしいデザインで統一されている。

  • エントランス。オフィスの雰囲気を感じさせる、Mindspaceのショールーム的な役割も果たしている場所。

  • 平坦な道の多いベルリンでは、ちょっとした移動には自転車が便利。会員には無料で自転車を貸し出している。

  • ミーティングルーム。アットホームでクールな雰囲気は様々な空間で表現されている。

  • テレフォンブース。電話をしたり集中したいときに重宝され、人気のスペース。

「オフィススペース」だけでなく
「ライフスタイル」も提供

そんなMindspaceのデザインのポイントは、「アットホームな雰囲気がある、働きやすい、クールな雰囲気がある、トレンディだけれども粋すぎていない」(アロイ氏)場所であるということ。ブランドマネジメントのため空間デザインをインターナルデザイナが行ったが、テルアビブと似たところもあるものの、あくまで別物。ベルリンらしさを表現できるように工夫を凝らしたそうだ。

アロイ氏の言う「革新的なスタイル」とは、共有スペースの広さを指す。Mindspaceほどの共有スペースを持つコワーキングスペースは、ベルリンには他にない。「チームがオフィスにいたくない時、アイデアフラッシュをする際に場所を変えたい時などに使えるよう、共有スペースを充実させているのです」(アロイ氏)。全体で5000平方メートルを誇るスペースには、最大で850名を収容可能。その中に個室を設けた上で、会員が自由に使える共有スペースを広く取ったのだ。Mindspaceが「大人のコワーキングスペース」と呼ばれる所以だろう。

利用者の心を掴むのに成功したというのも、ベルリンでの事業が好調な理由の一つかもしれない。「私たちは会員のことをメンバーと呼んでいるのですが、おもしろいことに、テルアビブとベルリンのメンバーは似ているんです。高い質のプロダクトを求めていますし、コミュニティに対して積極的に参加しようとします。オフィススペースとライフスタイルがつながっていることも歓迎していますし、メンバー同士のコラボレーションにも積極的です。言語以外、コミュニティは非常に似通っていると言えますね」(アロイ氏)

国を跨いでコネクションが作れる仕組み

現在、ベルリンのMindspaceを利用しているのは約740名。フリーランスのワーカーやスタートアップに加え、大企業も利用している。「Mindspaceをイノベーションハブとして活用している企業もありますね。イノベーションチームやインターナショナルなチーム、短期的に結成されたプロジェクトチームなどが日常のオフィスを出てMindspaceで仕事をすることがよくあります」(アロイ氏)

テルアビブとベルリンの企業同士をつなぐこともMindspaceでは行っている。各拠点にコミュニティマネージャーを置いてコネクションを築くほか、専用アプリも用意。「フリーランスのデザイナーを探しています」などと入力すると、ベルリンの会員だけでなく、テルアビブの会員ともコンタクトが取れるのだ。

「オフィス業界を変革したい」

「私たちの目標は、国際的に有名なブランドを作り、より多くの場所へと事業を展開させていくことです」とアロイ氏は言う。フリーランス、スタートアップ、中小企業に大企業。いずれも「スペースを使っている」という点では同じである。それらの個人、企業が求めているオフィススペース、ライフスタイルを提供することで、彼らにとって役に立つ存在でありたいという思いなのだ。「充実した施設、ハイエンドなデザイン、スタイル、ベネフィット、パートナーシップを提供し、メンバー同士がコラボレーションできる機会をどんどん提供していきたいです」(アロイ氏)

オフィスの機能だけでなく、そこにはライフスタイルも、コラボレーションもある。ビジネス以外に、人と出会えたり友人ができたりもする。まさに「マインドと魂の出会う場所」という意味を込めて名付けられたMindspace。「コワーキングスペースが盛り上がっている中で意義深いプレーヤーになりたいと思っていますし、オフィス業界の改革をしたいと思っています。オフィスの意味を変革できるような存在になっていきたいですね」(アロイ氏)との意気込みを見せる。テルアビブからベルリンへ。そして次の進出先はミュンヘンだという。今後の動きからは、目が離せない。

text: Yuki Miyamoto
photo:Tamami Iinuma

ベルリン随一の美しさとも言われるジャンダンマルクト広場を見下ろせるテラス。

約150名が入れるイベントスペース。外部にも貸し出している。

集中して作業したい時に使えるセミクローズドスペースも完備。

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