Workplace
Jun. 26, 2017
スタートアップカルチャーを取り入れる
IT業界の巨人
ミレニアル世代以降の若手を惹きつける新オフィス
[Cisco]San Jose, USA
- ミレニアル世代以降の労働力を確保したい
- 柔軟性の高くカジュアルなスタートアップカルチャーを目指す
- 若年層はもちろん、ベテランも活性化する職場へ
約30年の歴史を持つコンピュータネットワーク機器の”巨人”が若返りを試みている。
CEOチャック・ロビンズの就任以降、「スーツからジーンズへ」とシスコのカルチャーは変化したが「よりオープンに、カジュアルに」という流れはオフィス設計においても例外ではない。キャンパス内でも最も新しいオフィス「Building18」には「ミレニアル世代以降の人材を確保する」という明確な意図が込められている。
「シスコはネットワーキングの会社から、ネットワーキングアプリケーションの会社へとシフトしている。これまでとは違うタレントが必要なのです」とは同社ディレクターのティム・グルーバー氏。
個室を廃して開け放たれた雰囲気を出す
成熟した大企業のオフィスらしからぬ、若々しさに溢れた仕上がりはそのため。デザイン担当はStudio O+A、米国スタートアップにおけるオフィス設計のリーディングカンパニーである。
旧オフィスでは、開発者はパーティションで仕切られた個室にこもることが多く、コラボレーションは限定的だった。対照的に新オフィスは完全にオープン。個室を廃し、執務スペースは広く、開けはなたれた雰囲気になっている。
またカフェやキッチン、ゲームルームなど人が集うソーシャルエリアも充実。アイデアのひらめき次第で「さっとミーティングができる」部屋も増やした。会議室はICTの導入により、各フロア、各国のオフィスとビデオコラボレーションが可能だ。
4階の執務スペース。ソファに身を預けラップトップで仕事をするなど、かつてのシスコでは好ましくない光景だったという。
創業:1984年
売上高:約491億6100万ドル(2015)
純利益:約89億8100万ドル(2015)
従業員数:7万1833人(2015)
http://www.cisco.com
キッチン。この日は金曜日の夕方、社員によるポップアップパーティが開かれていた。若手からベテランまで世代を超えて集まる。
時間と場所に制限をかけない働き方に
適したオフィスを実現
かねてよりリモートワークが浸透していたシスコである。その意味では、時間と場に制限を設けない働き方(ABW)は一定以上実現していたが、コラボレーションやコミュニケーションの柔軟性が格段に増したことで、さらなる拡張が必要になった。
「旧オフィスではリモートワークを選ぶ人が多く、またオフィスに来たら1日いるか1日リモートで働くか、はっきりしていました。それが今では『14時まではオフィスで、以降はリモート』という人も見られます。そうかと思えばミレニアル世代はオフィスに毎日来るようになるなど、みなフレキシブルに働いています。オフィスに来て会社のヴァイヴやカルチャーを肌で感じる。若い世代の特性のようです」(グルーバー氏)
外観・内観もまた、自由を旨とするスタートアップカルチャーを体現するものだ。1階壁面には、地元アーティストの手によるコミッショングラフィティがカラフルに描かれた。テクノロジー企業のイメージとは相反する、自然素材を生かしたナチュラルな場も点在している。
地元アーティストの手によるコミッショングラフィティ。
多様な人材に合わせて
働く環境もフレキシブルに
様々な働き方を志向する社員がいるなかで、こうした試みは大きなチャレンジの1つだ。「ミックスな反応だった」とはグルーバー氏も認めるところ。だが、多様な人材にあわせて多様な環境を提供することでアジャストメントを促している。
家具1つとっても昔ながらのチェアやデスクで働く者もいれば、ビーンバッグやカウチでラップトップを開く者、スタンディングデスクで仕事をしている者もいた。ポップアップパーティを開催すれば世代を超えて社員が騒ぐ。
「オフィスの役割はまず、よりよいカルチャー、コネクティビティを作ること。またオフィスで働くほうがはかどるという人たちにも必要ですし、そして複数人がアイデアを出し合うことにも必要。しかし、どこでどう働くかは、自由に選択できるのです」(グルーバー氏)
スタートアップの風を取り込みながら、若手とベテランがバランスよく活性化する大企業へ。既存のオフィスも同コンセプトのもとでリモデルしていく予定だ。シスコの変革は続く。
インテリア設計:Studio O+A
text: Yusuke Higashi
photo: Hirotaka Hashimoto
WORKSIGHT 10(2016.10)より
エンタープライズ・ソリューションズ・オフィス
シニアディレクター
ティム・グルーバー